2人の韓元首相と韓米FTA
(以下引用)
昨年10月に米国議会で韓米自由貿易協定(FTA)が正式に批准された。直後に駐米韓国大使館が公表した報道資料には「上下院議員245人に延べ488回 会い、また2010年3月からメリーランド州を皮切りに31州57都市をめぐり、現地の企業関係者やマスコミ関係者、地元議員たちを説得した」などと記載 されていた。これは、韓悳洙(ハン・ドクス)駐米大使が韓米自由貿易協定を実現させるために活動してきた内容だ。この資料を読むまでもなく、韓悳洙大使が FTA実現のため努力を重ねてきたことは誰もが認める事実だ。当初は韓米FTAに強く反対していた米民主党のマイケル・ミショード下院議員も、米議会で批 准が行われた直後のパーティーに出席し、韓大使に「私は今も韓米FTAには反対だが、あなたの熱心な活動を認めないわけにはいかない。おめでとう」と言っ て握手を求めてきた。
李明博(イ・ミョンバク)大統領は09年、韓米FTAを実現させるため、前政権で首相を務めた韓悳洙氏を駐米大使に抜てきした。韓悳洙大使は今月16日 に辞意を表明するまでの3年間、李大統領から与えられたこのミッションを忠実に果してきた。ちなみに韓悳洙大使に「韓米FTA実現」という明確なミッショ ンが与えられたのは、今回が初めてではない。07年3月に盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領は韓悳洙氏を首相に指名したが、このときも政界やマスコミ関係者 の間では「韓米FTAに決着をつけるための内閣改造」などと言われた。それを裏付けるように、首相に指名された当時の韓悳洙氏には「韓米FTA締結支援委 員長」という職責も与えられた。
韓悳洙氏が首相に指名される以前、FTA締結のために首相として内閣を引っ張っていたのは韓明淑(ハン・ミョンスク)民主統合党代表だ。韓明淑代表が首 相在任中に韓米FTA実現に向けて積極的に活動していたことは、今もよく知られている。昨年、内部告発サイトの「ウィキリークス」が公表した米外交文書に よると、韓明淑代表は首相辞任後も、バーシュボウ駐韓米国大使(当時)に「来年(08年)春に新政権が発足するのを待つよりも、今秋に韓米FTAが批准さ れることを望む」と話していた。つまり、少なくとも07年までは、韓明淑・韓悳洙両氏は韓米FTAに関して完全に考えが一致していたというわけだ。
ところがそれから5年もたっていない今、2人の韓元首相は完全に反対の立場にある。韓明淑代表は先週、在韓米大使館を通じて米大統領と上下院議長宛てに 書簡を送付し「韓米FTAの再交渉が受け入れられない場合、破棄に向けた手続きを取る」という趣旨を伝えた。一方の韓悳洙大使は駐米大使辞任後、今度は貿 易協会の会長として韓米FTAの最終決着をつける使命を引き受けることになっている。この結果、今後はFTAをめぐり2人の韓元首相が論争を繰り広げる場 面を目にすることになるかもしれない。
韓米FTAに対する賛否や2人の韓元首相への個人的な感情とは関係なく、1人の大統領が一つの政策を推進するために任命した2人の首相が、5年後に両極 端の立場に分かれたのは厳然たる事実だ。これは果たして正常な国で起こり得ることだろうか。記者はしばしば米国の友人から、米国人の思考回路では理解し難 い韓国の政治状況について尋ねられることがある。そのたびに記者は「韓国の政治は本来、非常にダイナミックなものだ」というあいまいな言葉ではぐらかして いる。しかし今回だけは「ダイナミック」という言葉では不十分なようだ。
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